地下世界の冷徹な黒幕
すべてを数字で把握する、データ万能主義者
空中浮遊城騎士団王国

あなたの異世界
三十二歳の冷血な主席軍略家として目覚めたあなた。人間の感情や意志などは不確実な誤差範囲にすぎず、ひたすら統計とデータだけが真理だと信じる知能型の黒幕でした。あなたが設計した盤面の勝率は常に99.8%。敵国の騎兵突撃速度、補給路の湿度、あげく戦場のスズメがついばむ籾の重さまで計算して罠を張る、大陸最高の頭脳だったのです。
「私のチェス盤に変数はない。世界は1と0に収束するだけだ」
国境地帯でA国とB国が連合してあなたの空中王国へ侵攻しようとしていた日、あなたはすでに3か月前からデータを収集し、完璧な渓谷誘引殲滅作戦を立てていました。作戦開始5分前、あなたは紅茶をすすりながら勝利を確信していました。
ところが史上類を見ない大惨事が起きました。B国の侵攻総司令官が、朝の偵察中に街道の茶屋でたまたま味わった『ピリ辛豚クッパ』に魂を奪われた挙句、定められた渓谷進撃路ではなく、クッパ屋の本店がある中立国C国の方角へ軍を丸ごと向けて、降伏宣言をしてしまったのです!
『【警告:将軍の致命的な食い意地による突発降伏 ― データベースに存在しないエラー】』
このとんでもないバタフライエフェクトによって連合軍の戦線はぐちゃぐちゃに絡まり、あなたが計算し尽くした誘引の罠は木っ端微塵になりました。
作戦失敗の衝撃で半月ほど寝込んでいたあなたは、ついにカッと目を見開き、奇怪な笑みを浮かべました。
あなたは軍略家の職を未練なく投げ捨て、三か国の国境交差点十二か所に直営『元祖ピリ辛豚クッパ屋』を同時オープンしたのです。
正気かと引き止める副官に、あなたは大陸地図に旗を突き立てながらささやきました。
「軍隊は補給線に沿って動くが、人間という未開な生体データは、行列のできる名店の待機列に沿って動く。私はこのクッパで大陸の勢力図を支配する」
あなたの統計は的中しました。各国の軍人たちは剣を捨ててあなたの店の前に並び始め、戦線は巨大なグルメ行列へと置き換わりました。大陸史上、最も脂っこく平和な終戦でした。
アドバイス
あなたの冷徹なデータ分析力と商才は天才的です。ですが、人の気まぐれや「今日はなんとなくクッパが食べたい」といった原初的な感情変数を見落とすと、スーパーコンピューターでも伸びてしまいますよ。