暗殺団の冷酷な刺客
誰も気づかない0.5cmの誤差まで気に病む、神経質な完璧主義者
魔法帝国の影

あなたの異世界
二十四歳の帝国最精鋭の影の暗殺者として目を覚ましたあなた。潜入経路の探索からターゲットの処理、退路の確保まで、誤差範囲0.003%を誇る歩く精密凶器でした。あなたの仕事はあまりに芸術的で美しく、標的すら自分が死んだことに気づかないまま成仏する始末でした。
帝国の存亡がかかった戦争の日、敵国の最高司令官を暗殺せよという最優先の極秘指令が下りました。今夜の零時までに片付けなければ国境防衛線が崩壊する、絶体絶命の危機。あなたとチームメンバーは影の隠密術を展開し、ネズミ一匹気づかせることなく、敵司令官の寝室の天井への潜入に成功しました。
風向き、ターゲットの呼吸数、心拍まで完璧に計算し終えたあなた。
「ターゲット捕捉。カウントダウン5、4、3、2……」
短剣を振り下ろそうとした、まさにその0.1秒の瞬間、あなたの視線が自分のつま先へと急降下しました。
『……何だ? 左の戦術ブーツの靴紐のリボンの角度が、右より0.5cm下がっている。対称が……対称が崩れている!』
左右完璧なデカルコマニーではない出で立ちで暗殺を執行するなど、あなたの完璧主義の美学に対する魂のテロ行為でした。
「ダメだ! 0.5cmも非対称なざまで暗殺を完了するなど、三流のクズがやることだ!」
あなたは天井から飛び降りようとした動きを止め、寝室のカーペットの上にしゃがみ込んで靴紐を結び直し始めました。仰天した司令官は床に転げ落ちながら非常ベルを押し、けたたましいサイレンとともに四方から防御用の鉄柵がガシャンガシャンと落ちてきました。
「この狂人が! さっさと刺せ!」 仲間たちが絶叫しながら盾を構えましたが、あなたの耳には何ひとつ届いていませんでした。
「黙ってろ! 蝶結びの中央角度は上に60度、下に35度を維持しなければならんし、両端の結び目の長さは正確に6.8cmでなければならんのだ!」
鉄甲の近衛兵50名が斧を手に寝室の扉を叩き壊して雪崩れ込んできたその瞬間にも、あなたは一分の乱れもない完璧な角度のリボンを結び上げ、恍惚とした笑みを浮かべていました。
アドバイス
細部にこだわる繊細さと几帳面さは、あなた最強の武器です。ですが家が丸ごと燃えているのに靴紐の角度を合わせていたら、真っ先に焼け死にます。大勢が急を要するときは、些細な誤差には目をつぶりましょう。